2011年6月12日日曜日

JIS規格模様の再検討と北海道型模様(仮称)の提唱

以前の記事でJIS規格マンホール鉄蓋の分類を試みた。簡単に言うと、JIS規格模様と言われている鉄蓋模様は4種類に分類できるのではないか、という内容だ。しかし、この分類は取り消す。いずれまとまった文章を書きたいと思うが、とりあえず現時点での自分の考えを簡単にまとめておく。

1. JIS規格模様の概要

林が提唱した〔林 1984:178〕「東京市型」「名古屋市型」分類のうち「東京市型」に類似する模様がJIS A 5506に記載されている。実際は「模様、紋章座及びガス抜き孔は、参考として示したもので規格の一部ではない」とされているのだが、これをもってマンホール鉄蓋愛好家の間で「JIS模様」「JIS規格模様」などの表現で広く親しまれている。
具体的には、「マンホール JIS模様」「マンホール 名古屋市型」でGoogle画像検索すると多くの画像が得られる。

2. JIS規格模様の特徴

全国的にみられる一般的なJIS規格模様は、紋章座と外周の間に内帯と外帯の2つの円帯が認められる。
内帯は8等分に区画され、各区画の中心に○が配されている。○の下右左の三方もしくは上下左右の四方へ直線が出され、区画線と繋がっている。
外円帯は14等分(180度に対して7等分)に区画され、そのうち6区画には○が配され、残り1区画には鉄蓋を開く為のバール用孔が開けられていることが多い。
内帯・外帯ともに○の代わりに「雨水」「下水」などの文字が記されている場合もある。
総じて、JIS規格模様は○と直線の印象が強い、線を強調した模様であるといえる。

3. 名古屋市型模様の特徴

名古屋市型模様の鉄蓋も全国的に見られるが、これも内帯と外帯を見出すことが出来る。しかし以下のようにJIS規格模様(東京市型)と異なる特徴がある。
内帯は8等分に区画され、各区画(扇形)の中心に○が配置されているが、○から直線は出ていない
外帯は12等分(180度に対して6等分)に区画され、各区画(扇形)の中心に○が配置されているが、○から直線は出ていない
総じて、名古屋市型模様は○と扇形の印象が強い、面を強調した模様であるといえる。

4. 岩見沢市のマンホール鉄蓋の特徴

北海道岩見沢市の下水・汚水・雨水などの公設マンホール鉄蓋は、2種類に大別できる。
一つは図1のタイプである。


図1:JIS規格模様の鉄蓋

これを前記JIS規格模様の鉄蓋に位置づける。ただし図1の通り内帯の区画分けが曖昧であり、また外帯が16区画に区分けされている。このように一般的なJIS規格模様とは異なる点に注意が必要である。当面これをJIS規格模様(岩)と呼び、一般的なJIS規格模様と区別する。
(「Oka Laboratory 備忘録」の2011.06.12の記事に掲載されている鉄蓋に類似している)

もう一つは図2のタイプである。


図2:北海道型模様(仮称)の鉄蓋

従来、マンホール愛好家の間ではこのタイプの鉄蓋に付いてもJIS規格模様としていることが多い。しかし、前記のとおりJIS規格模様と名古屋市型模様の特徴を整理してから見直すと、これは○の上下左右に直線を配するJIS規格模様よりも、扇形で○を囲む名古屋市型模様に近い。ただし名古屋市型模様と異なり、1)外帯が14等分(180度に対して7区画)であること、2)各区画の扇形が、名古屋市型の1区画をさらに水平に分割し、白抜きの【】(すみつき括弧)の間に○を配した図形に見えること、の2点が注目される。すなわち、名古屋市型模様をより詳細にしたもの、あるいは名古屋市型模様の派生型と解釈できる。

この模様は、岩見沢市だけでなく北海道内の複数の自治体、あるいは北海道開発局など道管轄の鉄蓋にも見られる[*1]。このことから、図2の模様を「JIS規格模様(東京市型模様)」「名古屋市型模様」に対する「北海道型模様」(仮称)とすることを提唱したい。もちろん提唱するといっても今の所は自分の中だけでの話だが。なぜ北海道で独自に標準の模様を採用しているかという理由については、今の所、冬期の凍結によるスリップを少しでも解消する為ではないかと考えている。

今後は北海道内外での分布確認や標準策定の経緯解明などが課題となろう。

註:
*1 北海道外では、新潟市に見られる〔林 1984:143〕。また大阪市淀川区にも若干似た模様が見られる〔林 1984:120〕。

参考文献:
林 丈二 1984 『マンホールのふた 日本篇』 サイエンティスト社.

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